レザークラフトにおいて革の裏側(床面)を整える作業は見た目の美しさだけでなく、製品の耐久性や使い心地を大きく左右する重要な工程です。
「床面処理」とは専用の磨き剤を使用して、革の裏側の毛羽立ちを抑え、滑らかで艶のある状態に仕上げることをいいます。
処理を施すことで、お札やカードの出し入れがスムーズになり、さらに湿気による革の伸びや汚れを防止する効果も期待できます。
今回は私が普段の製作で実際に使用している道具と共に、床面処理の具体的な方法をご紹介します。
2つの代表的な床面磨き剤
市場には多くの磨き剤がありますが、まずはこの2種類を押さえておけば間違いありません。
それぞれの特性を理解して自分の製作スタイルに合ったものを選んでみてください。
1. CMC(カルボキシメチルセルロース)
粉末状の磨き剤で、水に溶かして使用します。透明で無臭、非常に安価なのが最大の特徴です。

使用方法: 粉末3gに対して水またはぬるま湯200ccを加えて混ぜ、半日ほど置いて完全に溶解させます。※溶解させる時に200cc程度の容器が別途必要です。
メリット: 圧倒的なコストパフォーマンス。70g入りの一袋(約800円)で4.5kg分もの溶液が作れるため、大型の作品を作る際や練習用として最適です。
注意点: 水分量が多くなりがちなため、薄い革に塗ると乾燥時に革が収縮して丸まってしまうことがあります。塗布量には注意が必要です。
「少し水っぽいな」と思った場合は溶解時の水分量を減らしてみてもいいかもしれません。
2. トコプロ(TOKO PRO)
乳白色の液状磨き剤です。タンニン鞣(なめ)し革はもちろん、クロム鞣しの革にも効果を発揮する汎用性の高い最新の定番アイテムです。

使用方法: 希釈の必要はなく、そのまま使用できます。
メリット: CMCに比べて乾燥が早く、仕上がりの艶が強く出ます。樹脂成分が含まれているため一度固まると毛羽立ちを抑える力が強く、効果が長持ちします。
注意点: CMCに比べると価格は高めですが、その分、作業効率と仕上がりの安定感は抜群です。
効率化のヒント:100均のドレッシングボトル

トコプロを大きな容器のまま使うのは手間がかかります。
100円ショップのドレッシングボトルに移し替えるとピンポイントで適量を出せるようになり、作業効率が劇的に向上します。
キャップ付きで保存にも便利です。
下の写真のようにスポイトのように吸えるので容器の移し替えも簡単です!

使用する工具と役割
磨き剤を塗布し、定着させるために必要な道具を揃えましょう。
ヘラ

磨き剤を均一に塗り広げるために使用します。
ヘラ先が少し幅広く、しなりのあるものを選ぶと広い面積でもムラなく塗布できます。

筆

主にCMCを使用する際に重宝します。
水分の多いCMCはヘラよりも筆の方が繊維の奥まで浸透させやすく、効率的に塗り広げることが可能です。
もちろんヘラでもできる為、”あればいいかな”くらいです。
ガラス板

ヘラや筆同様、磨き剤を塗り広げるために使用しますが、塗り広げた後に表面を擦って艶を出すためにも使用することができます。
ガラス板は床面を磨く以外にもヘリの斜め漉きの際に土台にしたり、ちょっとした重しにも使えたりするので1個はあってもいいかなと思います。
あまり大きくないものが使いやすいです。
乾拭き用の布
仕上げに床面を磨き上げるために使用します。
綿の古布や、帆布(キャンバス地)のように少し厚手で丈夫な布が摩擦熱を起こしやすく艶を出しやすいのでお勧めです。
CMCとトコプロの使い分け
どちらも優れた磨き剤ですが、私は作品の「構造」によって使い分けています。
CMCを使う場面
作品の内側など、「完成後に表から見えない部分」に使用します。
乾燥後の艶が控えめですが、コスパに優れているため、見えない箇所の保護として割り切って使用しています。
トコプロを使う場面
ブックカバーの内側や一枚仕立てのバッグなど、「床面が露出する部分」には必ずトコプロを選びます。艶の維持力が強く、時間が経っても毛羽立ちが戻りにくいため、手に触れる機会が多い作品に向いています。

床面を磨いても時間がたつとどうしても毛羽立ちが目立ってきてしまうのですが、CMCに比べてトコプロの方が艶のある床面を維持することのできる期間は長いような気がします。
また、クロム鞣しの革を処理したい場合は定着力の強いトコプロ一択と言ってもいいでしょう。
| 特徴 | CMC (粉末) | トコプロ (液状) |
| コスパ | ◎ 非常に高い | ◯ 標準的 |
| 手軽さ | △ 溶解に半日かかる | ◎ そのまま使える |
| 仕上がりの艶 | ◯ 自然な艶 | ◎ 強い艶 |
| 耐久性 | △ 毛羽立ちが戻ることも | ◎ 長期間持続 |
| おすすめ | 練習用・見えない箇所 | 表に出る部分・クロム革 |
まとめ
床面処理は、地味な作業ですが「神は細部に宿る」を実感できる工程です。
これからレザークラフトを始める方は、まずは手軽なCMCから試して、道具の扱いに慣れてみてください。
より高いクオリティや効率を求めるようになった段階でトコプロに移行するのがスムーズなステップアップです。
床面がピシッと整った革は、それだけで作品に命が吹き込まれたような清潔感が生まれます。
ぜひ指先でその滑らかさを確かめながら、丁寧に磨いてみてほしいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今回使用した革はメルカリにて革ハギレとして販売もしております。
ご興味のある方は是非ご覧ください!

最後までお読みいただきありがとうございました!



コメント
床処理剤を革に塗る筆はこのようなホビー筆の毛足を半分以下(2cm弱)にバッサリ切ったものが使い易いですよ。
切るときは革包丁でもいけますが刃こぼれしたら勿体ないのでオルファの別たちがベスト。毛が広がらないように指でまとめといて一気にザックリやります。
こうして作った筆は使用後も逐一洗わなくても布で拭うくらいでずっと使えるし便利してます。
https://www.youtube.com/watch?v=WqITQcpIKL4
なるほど!確かに筆の毛足が長すぎて扱いづらいなと思ってたんですよね…(^^;)
丁度使ってない別たちが居るので一度試してみます!!!