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革漉を漉く|レザークラフト基本テクニック

基本テクニック

作品のクオリティを左右する「革漉き」の基本と種類

”革を漉(す)く”とは、革の厚みを部分的に、あるいは全体的に薄くする作業のことを指します。 内側と外側の革の厚みに差をつけたいときや、革の端部分のみ厚みを抑えたいときの解決策として最も効果的な手法です 。

漉きを適切に行うことで革を重ねた際の不要な段差や余分な厚みを抑え、製品としての完成度や使い心地を大きく向上させることができます 。

今回は基本となる「ベタ漉き」と「斜め漉き」、そして表現の幅を広げる部分漉きについて解説します。

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全体の厚みを整える「ベタ漉き」

ベタ漉きは一枚の革を均一な厚さに漉く方法です 。
主に原厚(元々の革の厚み)が3〜4mmあるような素材を製作するアイテムに合わせて1.0mmや1.5mmといった指定の厚みに調整するために行われます 。

一つの目安として、私自身は製作の際に1.8mmと1.2mmの2種類をベースにすることが多いです。例えば、外装にはしっかりとした腰感が出る1.8mm、重なりが多くなる内装パーツには1.2mmといった自分なりの基準を持っておくと、設計や依頼の際に迷いがなくなります。

この作業には専用の「革漉き機」が必要となるため、個人で手作業で行うのは非常に困難です 。
そのため革を購入する際に販売店や問屋に依頼し、機械で漉いてもらうのが一般的です 。

費用と納期の目安

初めて依頼する際に気になるのがコスト面ですが、多くのショップでは以下のような相場感で請け負ってくれます。

加工費の相場: 大判の革1枚(一頭の半分など)につき、500円〜1,000円前後が一般的です。

分割漉きの注意: 1枚の革をカットして「半分は1.8mm、残りは1.2mm」というように複数の厚みを指定する場合(分割漉き)、それぞれのパーツごとに加工費が発生するケースが多いです。

納期: ショップ内に機械がある場合は即日〜数日、外注の加工所へ出す場合は1週間〜10日ほどかかることがあります。

まず「どのパーツを何ミリにするか」という設計図を明確にし、購入時にショップへ相談することをお勧めします。この数百円の「漉き代」を投資することで、その後の作業効率と仕上がりの美しさが劇的に変わるはずです!

表情を美しく仕上げる「斜め漉き」

部分漉きの中で最も頻繁に使われるのが、この斜め漉きです。
革の端(ヘリ)に向けて、斜めに角度をつけて徐々に薄くしていく技法です 。

斜め漉きの役割

革を重ねて縫い合わせる際、そのままではコバ(革の切り口)が厚くなりすぎてしまいます 。
重ねるパーツの接合部をあらかじめ斜めに漉いておくことで重なった部分の厚みを抑え、シャープで洗練された印象に仕上げることが可能です 。

きれいに漉くためのポイント

手作業で漉く際は以下の点に注意してみてください。

ガラス板を作業台にする

漉き作業は必ずガラス板の上で行うようにしましょう。
硬く滑らかなガラス面は柔らかいカッターマットのように刃先が食い込むことがありません。
これにより、狙った厚みに対してスムーズに刃を進めることができます。
また刃先がマットに引っかかって余計な摩擦が起きないため、結果として刃の切れ味が落ちにくくなるという副次的なメリットもあります。

刃のコントロール:角度の維持と「引き切り」の意識

革包丁を扱う際は傾斜している面(刃表)を下側にし、一定の角度を保つのが基本となります。

ここで意識していただきたいのが、刃を当てるだけでなく「スライドさせる」という動作です。
革は垂直に押し付けても美しく切ることはできません。
肉を切る際に包丁を前後に滑らせるイメージと同様に、横方向への動きを加えながら漉くことで繊維に無理な力をかけず、驚くほど軽い力で刃が吸い込まれていきます。

仕上げのひと手間

漉いた後、端に残った繊維(毛羽立ち)は革包丁を寝かせて軽く当て、丁寧に切り落としておきましょう 。

知っておきたいその他の部分漉き

ベタ漉き、斜め漉き以外にも、目的や用途に応じたテクニックがあります。

段漉き(だんすき)

段漉きは、その名の通り革の端を「段」のように一段低く漉き落とす技法です。
主に革の端を折り返して整える「ヘリ返し」という仕立てにおいて、欠かすことのできない工程となります。

この技法の目的は折り返した後の厚みをコントロールすることにあります。
例えば1.5mm厚の革をそのまま折り返すと、重なった部分は3.0mmという極厚になってしまいます。 そこであらかじめ折り返す幅(折り代)に合わせて一段低く漉いておくことで、折り返した後の厚みを元の革の厚み(1.5mm)に近づけることが可能です。

中漉き(なかすき)

中漉きはパーツを折り曲げる中心線に沿って溝状に革を薄くする技法です。
二つ折り財布の背(折り曲げ部分)やマチの角など、鋭角な曲げが必要な箇所に用いられます。

厚みのあるヌメ革などは、そのまま曲げようとすると強い反発が起き、無理に曲げれば銀面(革の表面)に不要なシワが寄ってしまうことがあります。
あらかじめ「曲げたいライン」の中漉きを行うことで革の繊維密度による抵抗を最小限に抑え、狙った通りの場所でしなやかに曲げることが可能になります。

フレンチエッジャーを使用すると意外と簡単に加工が可能です。
刃先のメンテナンスがイマイチだと、手こずるかもしれないのでお気をつけください!

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職人の道具選びとメンテナンス

漉き作業において、何よりも重要なのは「道具の切れ味」です。
革包丁を使用する場合は常に刃を研ぎ澄ませておく必要があります 。

もし研ぎに自信がない場合は市販の「スーパースカイバー」や「セフティーベベラー」といった替え刃式の道具を活用するのも一つの手です 。

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これらは手前に引くだけで比較的容易に漉くことができ、切れ味が落ちれば刃を交換するだけで良いため、初心者の方でも扱いやすいのが特徴です 。

最後に

革漉きは削りすぎれば強度が損なわれ、残しすぎればどこか垢抜けない仕上がりになってしまいます。非常に加減が難しく、ベテランであっても刃を入れる瞬間は緊張を覚えるデリケートな工程です。

しかし、この目立たない「薄くする」という作業の積み重ねが最終的にパーツ同士がぴたりと重なる、精緻な美しさを生み出してくれます。

いきなり本番のパーツに挑むのではなく、まずは失敗を厭わない端切れを使って、刃が革に吸い込まれていく感覚を指先に覚え込ませてみてください。
狙い通りの厚みに一枚ふわりと剥げたときの感覚は、この作業ならではの面白さと言えます。

一朝一夕にはいかないからこそ、少しずつ、自分の道具と革との距離を縮めていっていただければと思います。


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