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コバ処理(コバ磨き)の手順とおすすめ工具|レザークラフト基本テクニック

基本テクニック
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  1. コバ処理(コバ磨き)の本質とは
    1. なぜ「磨きのみ」にこだわるのか
    2. 厚みのあるコバ磨きを参考動画にしてみました
  2. 仕立てを支える「土台」の作り方
    1. 1. コバ磨きに適した「革」の選び方
    2. 2. 接着剤の選択が「コバの線」を決める
    3. 3. 練習に最適な「本ヌメ革」のハギレについて
  3. コバ磨きに使用している道具と、選び方の視点
    1. 1. 紙やすり(耐水ペーパー 240番・400番)
        1. 240番: 大きな段差や形状を整える「削り」の段階で。
        2. 400番: 表面を滑らかにし、磨く準備を整える「整え」の段階で。
    2. ヘリ落とし(SINCE・クラフト社)
      1. 愛用:SINCE へり落とし 0番(刃幅0.7mm)
      2. 以前の使用:クラフト社 へりおとし No.2(1.0mm)
    3. 3. 黒豆カンナ(平 18mm)
        1. 【豆知識】切れ味を維持する日常のメンテナンス
    4. 4. ウッドスリッカー
    5. 5. コバ処理剤(CMC・トコプロ)
      1. CMC(下地作り)
      2. トコプロ(最終仕上げ)
        1. なぜ「2段構え」なのか
    6. 6. 塗布用ツールの工夫(スポンジヘッドボトル)
      1. 理想の容器を追い求めた結果
      2. 使用上の注意点とコツ
    7. 7. コバ磨き用クロス(帆布)
        1. 帆布を使うべき2つの理由
  4. コバ磨きの実践|工程ごとの手順とポイント
    1. 1. 下地作り:表面を整え、CMCで繊維を固める
      1. 表面の面出し
      2. CMCの塗布
      3. 余分な水分の除去
        1. 【職人の一工夫】拭き取りには「キムワイプ」という選択
    2. 2. ウッドスリッカーで「締める」
      1. 摩擦熱で繊維を寝かせる
      2. 現れる光沢
        1. 【素材による仕上がりの違い】
    3. 3. ヘリを落とす:エッジに丸みと立体感を与える
        1. 【切れ味を保つ知恵】
    4. 4. 240番のヤスリで「造形」を整える
      1. 形状を追い込む
      2. 再度、CMCで繊維を固め直す
      3. 帆布による「締め」
    5. 5. 400番のヤスリで「肌」を緻密に整える
    6. 6. トコプロと帆布で「究極の艶」を出す
      1. 仕上げの塗布
      2. 帆布(または柔らかい布)で「光」を宿す
        1. 完成のサイン
        2. 仕上げの磨き
  5. 完成と、さらなる高みへのアレンジ
    1. 磨き抜かれたコバの完成
    2. さらに「光」を追い込みたいときは
        1. 【職人の独り言】
  6. まとめ|自分なりの「正解」を見つける楽しみ
    1. 【皆さんの声を聞かせてください】
    2. 関連

コバ処理(コバ磨き)の本質とは

レザークラフトにおいて、作品の完成度を左右する最も重要な工程の一つが「コバ処理(コバ磨き)」です。 革の断面(コバ)を磨き上げ、滑らかに整えるこの作業は単なる見た目の装飾ではありません。繊維を固めることで断面からの毛羽立ちや水分の浸入を防ぎ、作品の寿命を延ばすという重要な役割を持っています。

磨き方は作り手の数だけ正解があり、使用する革の性質によっても手法は千差万別です。

染色なし・磨きのみで仕上げたヌメ革のコバの美しい光沢と質感

なぜ「磨きのみ」にこだわるのか

私自身、これまで多くの手法を試してきました。
その中で辿り着いた答えは「染色や塗装に頼らず、工程を最小限に絞る」というスタイルです。

  • 失敗のリスクを徹底的に減らす
  • 革本来の美しさを引き出す
  • 経年変化(エイジング)を邪魔しない

この3つをモットーに試行錯誤を重ねた結果、最も合理的で、初心者の方でも再現性の高い「磨き」のフローが見えてきました。

今回はコバ磨きに最も適している「タンニン鞣しのヌメ革」を使い、染色・塗装なしで鏡面に近い輝きを生む仕立て方を解説します。

厚みのあるコバ磨きを参考動画にしてみました

仕立てを支える「土台」の作り方

1. コバ磨きに適した「革」の選び方

コバ磨きの仕上がりは、技術と同じくらい「素材の選定」が重要です。

  • 適している革: タンニン鞣しのヌメ革、繊維が詰まったショルダー(肩)やベンズ(腰)の部位。
  • 注意が必要な革: クロム鞣しの革、柔らかいソフトレザー、またはベリー(お腹)やネック(首)などの繊維が緩い部位。

繊維が緩い革やクロム鞣しの場合、本記事で紹介する「磨きのみ」の手法では、断面を追い込んでも繊維が寝てくれず、美しく仕上げるのが困難です。
まずは「硬く、繊維が締まった革」で感覚を掴んでみてください。

2. 接着剤の選択が「コバの線」を決める

革を貼り合わせる際、接着剤の選択一つで磨いた後に「接着層の筋」が目立つかどうかが決まります。

私は、乾燥後に粘り気が残る「ゴムのり」よりも、乾燥して硬化する「皮革用ボンド」や「サイビノール(水性ボンド)」を好んで使っています。

硬化するタイプの接着剤は革の層と一体化して削りやすいため、磨き上げた際に境目を感じさせない「一枚の厚い革」のような質感を作りやすいからです。

3. 練習に最適な「本ヌメ革」のハギレについて

「手元の革では上手く磨けない」「実際に使っている革の感触を確かめたい」という方のために、私が製作で日常的に使用している「本ヌメ革」のハギレをメルカリで頒布しています。

私自身が扱いやすさを感じている、繊維密度の高い素材を厳選しました。

※在庫状況や端切れの出方はその時々で変わりますが、練習用として活用してみてください。

コバ磨きに使用している道具と、選び方の視点

私が実際に使い込み、試行錯誤を経て手元に残った道具たちを紹介します。
高価なものから代用品まで、それぞれの「理由」を添えてまとめました。

1. 紙やすり(耐水ペーパー 240番・400番)

断面の段差を整えるために使用します。
私はコスパに優れた「ナラテック」製の耐水ペーパーを愛用しています。

240番: 大きな段差や形状を整える「削り」の段階で。
400番: 表面を滑らかにし、磨く準備を整える「整え」の段階で。

[関連記事:紙やすりの選び方と使い分けの詳細はこちら]

ヘリ落とし(SINCE・クラフト社)

仕上がりのクオリティに最も直結するのが、この「ヘリを落とす」工程です。

愛用:SINCE へり落とし 0番(刃幅0.7mm)

高価でしたが、抜群の切れ味によりコバが潰れず、磨き上がりの美しさが劇的に変わりました。
刃先が細く、細かい箇所の取り回しも良好です。

切れ味の鋭いSINCEのヘリ落とし

以前の使用:クラフト社 へりおとし No.2(1.0mm)

扱いやすく、厚みのある革をしっかり落としたい時にはこちらの方が角度を出しやすい場面もあります。

クラフト社 へりおとし No.2(1.0mm)_初心者向けのクラフト社製ヘリ落とし
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3. 黒豆カンナ(平 18mm)

最初は「難しそう」と敬遠していましたが、今では手放せない道具の一つです。
コバの面出しはもちろん、貼り合わせた革の段差を整える際に重宝します。

特に私が多用するのは、角の「R(丸み)」を作る工程です。
ヘリ落としやヤスリだけでも形は作れますが、カンナで大まかに角を落としてからヤスリで整える方が歪みのない綺麗な曲線に仕上がります。

私が持っている「平」は直線や外角のR向きですが、内カーブの多い作品を作る方なら「反」タイプも検討の価値があるようです。

貼り合わせた革の段差を整えコバのR出しに使用する18mm幅の黒豆カンナ
【豆知識】切れ味を維持する日常のメンテナンス

カンナやヘリ落としの切れ味は仕上がりに直結します。
とはいえ、毎回砥石を準備するのは手間がかかるもの。
そこで私が実践している、手軽なメンテナンス方法をご紹介します。

少し切れ味が落ちたかな?と感じたら、「青棒」を塗り込んだ革(革砥)で数回撫でるだけで、驚くほど鋭さが回復します。

もし青棒だけでは戻らないほど鈍くなってしまった場合は「耐水ペーパー(600番程度)」で軽く刃先を整えてから、仕上げに青棒を通すのが私のルーティンです。
この方法なら本格的な砥石を持ち出さずとも作業の合間にサッと切れ味を戻すことができます。

道具を研ぐ時間は自分の技術と向き合う時間でもあります。
ぜひ、この手軽なケアから試してみてください。

4. ウッドスリッカー

私は現在、市販のウッドスリッカーを使用していますが、実は「溝」の部分はほとんど使っていません。

代わりに多用しているのがサイドの「溝のない平らな部分」です。
特に貼り合わせた革の断面や、緩やかな曲面の直線部分を磨く際、平面でしっかりと圧をかけながら磨く方が面が安定して綺麗に仕上がることに気づいたからです。

直線や曲面の磨きに多用する木製のウッドスリッカー
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今、新しく導入を検討しているのが「桜丸(さくらまる)ウッドスリッカー」
この道具の魅力は平面だけでなく「溝」の形状が丸く、革の厚みに合わせて柔軟に対応できそうな点です。
今の磨き方(平面使い)を活かしつつ、さらにディテールを追い込めそうな予感がしています。

もし、すでに愛用されている方がいらっしゃいましたら、ぜひ使用感などを教えていただけると嬉しいです。

5. コバ処理剤(CMC・トコプロ)

私がたどり着いたのは、役割の異なる2つの薬剤をステップに合わせて使い分ける方法です。

CMC(下地作り)

磨きをかける前の「下地作り」として使用しています。
粉末を水で溶いたものですが、水だけで磨くよりも革の繊維がキュッと固く引き締まってくれる感覚があります。

まずはCMCで土台を安定させるのが、私のルーティンです。

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トコプロ(最終仕上げ)

最後の仕上げ、いわゆる「艶出し」の段階で投入します。
CMCに比べて磨き上げた際の発色が格段に良く、透明感のある深い艶が出やすいと感じています。

なぜ「2段構え」なのか

最初からトコプロだけでも磨けますが、あえて浸透性の良いCMCで内部を固めてから仕上げにトコプロで表面をコーティングするように磨く。
このステップを踏むことで時間が経っても毛羽立ちにくい、タフで美しいコバに仕上がります。

6. 塗布用ツールの工夫(スポンジヘッドボトル)

コバ処理剤の塗布には以前は100均の習字用筆を使っていましたが、現在は「スポンジヘッドボトル」に落ち着いています。
CMCやトコプロを中に入れておくだけで、蓋を開けてすぐに塗布できるスピード感は一度味わうと戻れないほど快適です。

100均の液体のり容器を再利用した効率的なコバ処理剤塗布ボトルでのCMC塗布の様子

理想の容器を追い求めた結果

以前は「バスコ」の空き容器や特定の代用品を使用していましたが、現在は入手が困難になっています。
専用のレザークラフト用品として安価に普及してほしいところですが、なかなか見かけないのが現状です。

そこで辿り着いた、最も手軽で確実な方法がこちら。

  • 「液体のり(アラビックヤマト等)」の容器を再利用する

100均などで液体のりを購入し、中身を使い切る(あるいは別の容器に移す)などして綺麗に洗浄したものを使っています。
やはり、のり用のスポンジヘッドは液漏れしにくく、耐久性のバランスも一番優れていると感じます。

使用上の注意点とコツ

  • 粘度の高い液体でもOK: トコプロのような少し粘度のある液体でも問題なく使用できています。
  • ヘッドの消耗: 革の断面で何度も擦るため、どうしてもスポンジが痛みやすいです。予備のヘッドを準備しておくか、100均で本体ごと新調する割り切りも必要かもしれません。
  • 塗布のコツ: ヘッド中心の突起を少し押し当てるようにすると、内容物がスムーズに出てきます。

「もっと良い専用品があるよ!」という情報をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひ教えていただけると嬉しいです。

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7. コバ磨き用クロス(帆布)

磨きの最終工程で欠かせないのが、仕上げ用のクロスです。
私は使い古した柔らかい布の端切れも併用していますが、やはり専用の「帆布(はんぷ)」を使うと、磨きの効率が格段に上がります。

帆布を使うべき2つの理由
  • 適度な摩擦熱: 帆布の粗い織り目が磨く際の摩擦熱を効率よく生み出し、処理剤を革の繊維の奥まで浸透させてくれます。
  • 布が「育つ」という感覚: 帆布は使い込むほどに処理剤が適度染み込み、自分専用の道具として「育って」いきます。

十分に育った帆布は革との滑りが驚くほどスムーズになり、軽い力でも深い艶を引き出せるようになります。
単なる「消耗品」としてではなく、使い手とともに成長していく道具。
そんな帆布を育てる過程もまた、レザークラフトの奥深い楽しみの一つではないでしょうか。

[関連記事:【入門】最初に揃えたい基本道具13選はこちら]

コバ磨きの実践|工程ごとの手順とポイント

ここからは私が実際に行っている手順を解説します。
大切なのは一気に仕上げようとせず、革の状態を確認しながら進めることです。

1. 下地作り:表面を整え、CMCで繊維を固める

まずは磨くための「土台」を作ります。

表面の面出し

縫製後、2枚以上の革を貼り合わせた場合は黒豆カンナでコバ表面を平らにならします。
段差をなくし、一枚の厚い革のように見せるための重要な工程です。
(※1枚革の場合や裁断時にすでに断面が揃っている場合は、この工程は省略して構いません)

18mm幅の黒豆カンナで貼り合わせた革の段差を整えたコバ

CMCの塗布

面が整ったらCMC溶液を塗布します。
ここで「スポンジヘッドボトル」を使うと狙った箇所に無駄なく塗り広げられるので非常に効率的です。

効率的なコバ処理剤塗布ボトルでのCMC塗布
100均の液体のり容器を再利用した効率的なコバ処理剤塗布ボトル

余分な水分の除去

塗布後、吸水性のある布で表面の余分な水分を軽く拭き取ります。

【職人の一工夫】拭き取りには「キムワイプ」という選択

以前はタオル地の布などを使っていましたが、現在は「キムワイプ」を愛用しています。

理系大学出身の私にとって実験室で研究に没頭していた頃からキムワイプは非常に馴染み深い存在でした。
精密機器やガラス器具の清掃に使われるそれは、「吸水性が高く、かつ繊維の毛羽立ち(パルプくず)が極めて少ない」という特性を持っています。

この特性は実はレザークラフトのコバ磨きにも最適です。

  • 繊維が残らない: タオル地のように細かい糸くずがコバに付着し、そのまま固まってしまう心配がありません。
  • 抜群の吸液性: 余分な処理剤を瞬時に吸い取り、理想的な半乾きの状態を素早く作れます。

学生時代、研究室で当たり前に使っていた道具が巡り巡って今の製作を支えている。
そんな背景も楽しみながら日々コバに向き合っています。

2. ウッドスリッカーで「締める」

余分な水分を取り除いたら、いよいよウッドスリッカーによる磨き作業に入ります。

摩擦熱で繊維を寝かせる

スリッカーを一定の速度で往復させると摩擦熱によってCMCが革に馴染み、毛羽立っていた繊維がキュッと寝ていきます。
磨き進めるうちに抵抗が軽くなり、表面にカチッとした硬さが生まれてくれば順調です。

ウッドスリッカーの平らな部分を使い圧をかけてコバを磨く様子

現れる光沢

さらに磨き込んでいくと写真のように鈍い光沢が現れます。
この時点での光沢は、いわば「磨き上げられた繊維」そのものの輝きです。

CMCとスリッカーによる下地作りで光沢が出始めたヌメ革のコバ
【素材による仕上がりの違い】

この段階でどこまで光沢が出るかは革の性質——特に「鞣(なめ)し」の種類に大きく左右されます。

冒頭でお伝えした通り、繊維が密に詰まっている「タンニン鞣しのヌメ革」は、このステップだけでも十分に美しい表情を見せてくれます。
一方で、クロム鞣しの革や柔らかい革の場合、同じように磨いても光沢が出にくいことがありますが、それは技術不足ではなく「素材の特性」によるものです。

まずは自分の使っている革がどのような反応を見せるのか、スリッカーから伝わる感触を確かめながら進めてみてください。

3. ヘリを落とす:エッジに丸みと立体感を与える

CMCでコバの繊維がカチッと固まったら、次に「ヘリ落とし」の工程に移ります。

  • なぜこのタイミングなのか: 革が柔らかい状態よりもCMCで繊維が引き締まった状態の方が、ヘリ落としの刃が「逃げ」ずにスッと入ります。切り口が安定するため、均一な幅で角を落とすことができるのです。
  • 作業のタイミングに注意: 塗布直後で水分が多すぎると刃が滑らずに革を噛んでしまうことがあります。表面が少し乾き、革にコシが戻ったタイミングを見計らって作業するのが失敗を減らすコツです。
【切れ味を保つ知恵】

ヘリ落としの作業中に「少し抵抗があるな」と感じたら、すぐにメンテナンスを行いましょう。
常に最高の切れ味を維持することが、ガタつきのない美しい断面を作る一番の近道です。

  • 革砥(かわと)で研ぐ: 青棒を塗り込んだ革の端切れに刃先を当て、手前に数回引くことで鋭さが戻ります。
  • 「糸」を使ったメンテナンス: ヘリ落としの刃先は凹状にカーブしているため、平面では研ぎきれないことがあります。その場合は少し太めの「糸」に青棒を擦り込み、それを刃の溝に通して数回スライドさせてみてください。

この「糸」を使った方法は研ぎにくい刃の裏側までしっかりと青棒が届くため、驚くほど切れ味が復活します。
作業の手を止めるのを惜しまず、こまめに刃先を整えるのが仕上がりを左右するポイントです。

CMCで固めた後のコバの角をヘリ落としで均一に削ぎ落とす工程

ヘリを落とし終えると角が取れて断面に丸みが生まれ、一気に「仕立てられた製品」としての表情が見えてきます。

ヘリ落としが完了し断面に丸みがついたコバの状態
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4. 240番のヤスリで「造形」を整える

ヘリ落としで角を落とした後は240番の紙ヤスリを使って、断面を滑らかなカーブ(アール)に整えていきます。

形状を追い込む

この段階の目的は単に表面を擦ることではなく、ヘリ落としの跡を消しながら「綺麗な丸み」を作ることです。
満遍なくヤスリをかけ、断面が均一な白みを帯びた状態になれば次の工程へ進むサインです。

240番の紙やすりでヘリ落としの跡を消し断面を滑らかな曲線にする作業

再度、CMCで繊維を固め直す

ヤスリによって毛羽立った繊維を再びCMCで固めます。
スポンジヘッドボトルで塗布した後、余分な水分を吸水性の高い布(またはキムワイプ)でサッと拭き取りましょう。

スポンジヘッドボトルでコバにCMCを均一に塗布する作業

帆布による「締め」

ここで帆布を使い、圧をかけながらしっかり磨き上げます。
240番という比較的粗い番手の後なので、まだ表面に微細な凹凸は残っていますが、この時点で既に「光沢のある硬い曲面」が姿を現してくるはずです。

布で磨く

この段階で土台となる「形」を完璧に作っておくことで、この後の400番、そしてトコプロでの仕上げが格段に美しくなります。

240番のヤスリがけと布での磨きを終え形状が整ったコバ

5. 400番のヤスリで「肌」を緻密に整える

いよいよ最終仕上げの一歩手前、400番のヤスリを使ってコバ表面をさらに緻密に整えていきます。

  • 微細な凹凸を消し去る: 240番で作った「形」を崩さないよう、優しく、かつ全体を均一に撫でるようにヤスリをかけます。この番手で磨くことで表面のざらつきが消え、指先で触れた際に吸い付くような滑らかさが生まれます。
  • 「磨き」を重ねる: ヤスリがけの後は先ほどと同様にCMCを塗布し、水分を拭き取ってから帆布で磨き上げます。 240番の時よりも反射がはっきりとし、コバがギュッと凝縮されたような質感に変わっていくはずです。

この段階で、目視して「もうこれで完成でもいいのでは?」と思えるくらいのクオリティまで追い込んでおきましょう。
ここでの丁寧さが、最後にトコプロを乗せた時の「奥行きのある光沢」を左右します。

400番の紙やすりで表面の密度を高めさらに滑らかな肌に整える様子

6. トコプロと帆布で「究極の艶」を出す

これまで丁寧に積み上げてきた「磨き」の集大成として、最後にトコプロを使用して仕上げます。

仕上げの塗布

トコプロを薄く、均一に塗布します。
※画像では指で直接塗布していますが、現在はより効率的で銀面(革の表面)への液漏れを防げる「スポンジヘッドボトル」での塗布を推奨しています。
指で塗る場合は液が銀面にはみ出さないよう、慎重に少量ずつ伸ばすのがコツです。

指を使ってトコプロをコバ表面に薄く均一に塗り広げる最終仕上げの様子

帆布(または柔らかい布)で「光」を宿す

塗布後は仕上げの磨き上げを行います。

完成のサイン

CMCで固めた土台の上にトコプロが重なることで一気に色の深みが増し、透明感のある「奥行きのある光沢」が宿ります。
断面が滑らかに光を反射し、指先で触れたときに「カチッ」とした硬い質感を感じられたら、それが完成の合図です。

仕上げの磨き

画像では柔らかい布(端切れ)を使用して磨いていますが、より効率的に光沢を出したい場合は先述した「帆布」の使用がおすすめです。
もちろん、画像のように柔らかい布であっても、これまでの下地作りがしっかりしていれば十分に美しい光沢を引き出すことができます。

柔らかい布で磨き上げる様子

完成と、さらなる高みへのアレンジ

磨き抜かれたコバの完成

こちらが全ての工程を終えたコバの姿です。
特別な塗装や顔料を使わずとも、革の繊維を丁寧に整え、圧をかけて磨き上げることで、これほどまでに透明感のある表情に仕上がります。

全工程を終え透明感のある深い光沢が宿ったヌメ革のコバ磨き完成例

さらに「光」を追い込みたいときは

もし、この状態からさらに強い光沢や重厚感を出したい場合には以下のようなアレンジを試してみてください。

  • 400番以降の「重ね磨き」: 一度完成した状態から再度400番(あるいはそれ以上の細かい番手)で軽く表面を整え、再びトコプロで磨き直します。工程を繰り返すことで、コバの密度がさらに増し、鏡面のような滑らかさに近づきます。
  • ロウ(ワックス)の刷り込み: 仕上げに固形のロウをコバに擦り付け、帆布や布で素早く磨き上げる手法です。摩擦熱でロウが溶け込み、革の表面をコーティングすることで、磨きだけでは出せない鋭い光沢と、確かな撥水性が備わります。
【職人の独り言】

私自身は「磨きのみ」で素材の良さを引き出す仕立てを好んでいますが、技法に絶対の正解はありません。
作品の雰囲気や用途に合わせて、必要に応じてこうした「プラスアルファ」の手法を選んでみてください。

まとめ|自分なりの「正解」を見つける楽しみ

今回は私が試行錯誤しながら続けている「染色・塗装に頼らないコバ磨き」をご紹介しました。

コバ磨きの世界に「唯一絶対の正解」はありません。
革の種類が違えば最適な力加減も、必要な薬剤も変わります。
今回ご紹介した方法は、あくまで数ある技法の中の一例に過ぎません。

ですが、もしあなたが「ヌメ革の自然な美しさを活かしたい」と感じているなら、この「素材そのものを磨き抜く」というやり方が自分に合ったスタイルを見つける一つのきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

【練習用の革について】
今回の記事で使用した「本ヌメ革」はメルカリでも頒布しています。
コバ磨きは素材との相性がとても重要です。
この革は私自身が製作に使用している繊維密度の高いものを厳選していますので、練習用にちょうど良い素材を探している方は、よろしければ覗いてみてください。

[メルカリで「本ヌメ革」のハギレをチェックする]

まずはお手元の革で一度試してみてください。
磨くたびに変わっていく断面の表情、スリッカーから伝わる手応え……。
その変化を楽しみながら、あなただけの「心地よい磨き方」をぜひ探求してみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


【皆さんの声を聞かせてください】

「私はこんな道具を使っている」「この工程を足すともっと綺麗になった」など、あなたのこだわりやおすすめの道具があれば、ぜひコメント欄で教えてください。
作り手同士の知恵が、また誰かの助けになります。

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