コバ処理(コバ磨き)とは”革の断面(コバ)を磨いて綺麗にすること”です。
磨く方法は人それぞれで、使用する革の性質によってもその手法はまちまち。
私はできるだけ失敗を減らすため(高い革を無駄にしたくないため)に「なるべく工程数を少なくして染色・塗装せずに綺麗なコバを作る」をモットーにこの1年試行錯誤してきました。
今回はコバ磨きに適していると言われる、「タンニン鞣しのヌメ革」を使用して「磨きのみ」でコバを綺麗に仕上げる方法を小ネタありでご紹介していきます。
注意点
クロム鞣し革や柔らかい革、ベリーやネックなどの繊維が緩みやすい部位を使用した場合、後述する磨き方では綺麗に仕上げることが難しい場合がありますのでご注意ください。
準備するもの
紙やすり
240番、400番の耐水ペーパー紙ヤスリを使用。


やすりの使用方法は下記記事でもご紹介しています。

楽天でナラテックさんが出品している紙やすり、コスパいいなと思っていつも購入しています。
へり落とし
「SINCE 0番」を使用。
ヘリ落としも価格がピンキリで種類も多く、最初どれを使ったらいいか分からず•••
とりあえず一番よく使いそうな「ヘリ落とし」を高いものを選んで思い切って買ってみましたが買ってよかったです。
切れ味がめちゃくちゃいいです。


ちなみにSINCEのものを購入するまでは「クラフト社のヘリ落としNo.2」を使用していました。

これはこれで使いやすかったですが、私の作る作品にはもう少し刃先が狭い方があってるよな•••と思いながら使っていたのも買い替えた要因の一つです。
一応リンク貼っておきます。

切れ味もそこそこですし、コスパは良かったです。
カンナ
黒豆カンナ「平(18mm)」を使用。
カンナって少しお値段もするし使い方難しそうだな•••使う必要あるのか?と思ったこともありましたが今では私には必須のアイテムです。


コバの処理だけでなくトコ面を漉く際も使用することがあり、使い始めて意外と用途多いなと思いました。
とにかくこれでコバを削るのが楽しいです。
「平」は直線のコバに適しており、内カーブが多い作品に適している「反」もあるようです。
私は平しか持っておらず•••反はいつか購入してみたいです。

切れ味が鈍ったら革包丁同様、刃先を青棒で整えるとよく切れるようになります。
ウッドスリッカー
今持っているウッドスリッカーは溝部分が使いづらく、溝なし部分だけで磨いています。
丸いタイプのものの方が使いやすかったりするのかな•••と思ったりも。
曲平面部分の使いやすさは保証します!


個人的に平面曲面どちらにも対応できそうな桜丸ウッドスリッカーが気になってます。
溝部分が丸いのもめちゃくちゃ使いやすそうです。

使われている方がお見えでしたら是非、使用感教えてください。
コバ処理剤
- CMC
磨き前の革の繊維固めとして使用。
水で濡らす方法を採用されている方もお見えになられるので、これは好みかもしれません。

個人的には気持ち水よりもコバが固く引き締まってくれてるかな?と思ってます。
- トコプロ
最終仕上げ磨きで使用。
CMCよりも発色が良くなる気がします。

(小ネタ)コバ処理剤 塗布具
コバ磨き剤を塗布する際に、以前は100均の習字用筆を使用してましたがスポンジヘッドボトルが便利すぎでした。
容器にCMCやトコプロを入れるだけで使用可能です。

これ専用のレザークラフト用品が安価であったら売れそうなのに見かけないですよね•••
あるのかな?私が知らないだけかもですが。ご存知の方お見えでしたらご連絡お待ちしております!
デメリットは革で擦れてスポンジが痛みやすいこと。
画像ではバスコの容器を使用してますが、なかなか売っているところがないので•••
代用品がこちら。
使用する際はスポンジヘッドの替えの準備は必須です。

今回使用している写真は少し前に撮影したもので、トコプロを塗布する際にこのボトルを使用していませんが•••現在は絶賛使用中です。
この青いスポンジヘッドの難点は少し力を加えてヘッドの中心部分の突起を押さないと内容物が出てこないこと。
少し粘度のある液体でも問題なく使用できています。
コバ磨き用クロス(帆布)
私は使わなくなった柔らかい布の端きれを使ってますが、専用の帆布を使用すると擦る回数を少なくでき、効率よく磨くことができます。

使用するたびに液が布に染み込んで徐々に磨きやすくなっていくため、帆布を育てるのも楽しみの一つになるかもしれません。
帆布が育つと磨き時のコバ滑りが良くなり、スムーズな磨きが実感できると思います。
コバ処理の方法(磨き方)
はじめに
縫製が終わった後に黒豆カンナでコバ表面を平らにならしておきます。
(カンナは2枚以上の革を貼り合わせた場合のみに使用しています。)
貼り合わせ後に裁断する場合や1枚革の時など、あまりコバ表面に凸凹がなければカンナでの工程は省いてもいいかもしれません。

コバ表面を固めるためにCMC溶液を塗布していきます。


吸水性のある布で水分を軽く拭き取り、余分な溶液が銀面に付かないようにします。
よく育った帆布だと吸水性がない場合があります。

ウッドスリッカーで磨いていくと•••

かなり光沢を持ち、コバ表面も硬く磨き上がります。

この仕上がりは革の性質に大きく影響されるので全ての革でこの段階でここまで磨き上げられるわけではないかもしれません。
ここでヘリを落としていきますが、CMCでコバを固めることができたのでヘリも落としやすくなっていると思います。
水分を多く含みすぎている場合はうまく刃が入らない場合があるので、少し乾燥させてから作業すると良いかもしれません。

ヘリ落としの歯がスムーズに入らない場合は青棒で軽く磨くと切れ味は戻ります。
ヘリを落とし終わった状態がこちら。

240番ヤスリ
ヘリ落としで面取りした部分を240番のヤスリで削って滑らかなカーブに形成していきます。

満遍なく磨けたらCMC溶液を塗布してコバ表面を再度固めます。
液が付きすぎたら吸水性の高い布で軽く拭き取ります。

帆布で磨き上げていきます。

まだ少し表面は荒いですが、光沢のある曲面が見えてきました。

400番ヤスリ
最後に400番の紙やすりで磨いていきます。

磨いた後はトコプロを塗布して•••

CMC塗布後と同様に帆布で磨いて艶出しをしたら完成です。

完成
出来上がりのコバがこちら。

ここからさらに400番で重ね磨きをしてもいいですし、さらに艶を出したい場合はロウを刷り込んで磨くとかなり強い光沢を持ったコバに仕上げることができます。

参考までに、8枚の革を重ねて磨いた名刺入れのコバです。

こちらはコバにロウを刷り込んで仕上げてあります。
今回使用したタンニン鞣し革
使用した革は姫路にあるタンナー、山陽の「本ヌメ革」です。
山陽では「ピット槽」を用いた植物タンニン鞣しを採用しており、鞣す際に皮が揉みほぐされないことから「ドラム式」よりも比較的繊維密度の高いヌメ革を生産することが可能です。

繊維密度の高さは革の硬さにも影響し、比較的硬い質感の革となります。
※硬い革はコバを磨く際に安定感があり、作業がしやすく綺麗に仕上がるな、という印象です。
私が運営しているブランド、革KAGIのオンラインショップに並べている商品は全てこの山陽レザーと今回ご紹介した磨き方で作成しております。
(株)山陽の革は「和乃革」でA4サイズから購入できます。

まとめ
コバ磨きの一例を私が普段行っている方法を元にご紹介してみました。
冒頭にもお伝えしたようにコバ磨きには人それぞれ多岐にわたる磨き方があり、革の種類によってもその方法は変わってきます。
今回の内容が一部分でも、ご使用になられている革のコバ磨きの参考としていただけたら嬉しいです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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