新作開発のご紹介として、今回は縦ケースの作製の様子をまとめました。
既存の横型IDケースを元型として作成していきます。
使用する革はコバ磨きに適していると言われる、「タンニン鞣しのヌメ革」です。
実際に使用している革のハギレをメルカリで販売しております。
安価に一度試してみたい!という方は下記画像のリンク先にてご覧ください。
※タイミングによっては該当の革が売り切れている場合もあります。
出品ができていない在庫がある場合は新規出品することも可能ですので是非お問合せください。
完成品
完成品はこちら。
使用する道具・材料
下記記事でご紹介している道具・材料を使用して作成していきます。
後ほど工程の中で出てくる、「ハトメリングの取り付け方」については下記記事をご参照ください。
前面のプラスチック部分は市販のカードケースを切り取って使用しています。
作製方法
型紙作成
まずは横型IDケースの型を変形させて、縦型の図面を引いていきます。
革のパーツは4種類、右上のパーツは前面に貼り付けるプラバン用です。
プラバン用は横ケースと同じ大きさにしたのでいらないかな…と思いつつ一応作っておきました。
厚紙をざっくりと粗裁ちして加工しやすくします。
厚紙の際から3mmの所に菱目打ちにて5mm間隔で目打ちをします。
コーナー部分はR1のコーナー抜きで抜いてしまいます。
デザインナイフで切り出すこともできなくはないですが、コーナー抜きだとめちゃくちゃラクです。
コバ磨きの時も革の切り口が奇麗なので一石二鳥。
コーナー部分は丸ギリで穴を空けておきます。
丸ギリに特に意味はなく、菱目打ちの1本刃でもいいのですが•••
革への転写の時に「持ち替える工具の種類を減らす」と作業効率が上がるかなと思ってやってます。
ハトメリングを取り付ける部分も型紙にハトメ抜きで穴を空けてしまいます。
革への転写の際にはこの穴の形も一緒に跡を付けます。
各パーツ、下処理が終わりました。
金属製の定規とカッターナイフで直線部分のカッティングを行えば…
型紙完成です。
革へ転写
転写をする際は、基本的に丸ギリで革に跡をつけていきます。
表側の↑こちらのパーツだけ、1.8mm厚の革を使用します。
その他のパーツは1.2mm厚の革へ転写をし、菱目穴部分も型紙に沿って軽く刃を押し当てて後をつけていきます。
転写完了です。
トコ面磨き
今回、トコ面の処理は「トコプロ」を使用しています。
トコプロを適量取ってガラス板で延ばし、
柔らかい布で磨き上げます。
菱目打ち・ハトメ抜き→切り出し
一旦各パーツを粗断ちしてから次の作業を進めます。
菱目打ち、ハトメ抜きを施していきます。
部位によって1本目、2本目の菱目打ちも使い分けていきます。
だいたい形ができてきました。
裁断は直線のみなので革包丁のみで行います。
斜め漉き
ケース上部の内側に縫い込むパーツは作品が分厚くならないよう、5mm程度の幅で斜め漉きをしておきます。
コバ磨き(内側)
ここで縫い終わった後に処理することが難しい部分のコバ処理をしてしまいます。
背面カード入れの口部分と前面パーツの内側のプラスチック板に接する部分の2ヵ所。
CMC溶液を塗布して
柔らかい布で磨きます。
前面パーツ内側も同様にCMC塗布後磨き、
#400のやすりで磨いたのちに改めてCMC塗布→布で磨きます。
けがき
パーツを接着剤で張り合わせる部分をあらかじめ目の粗いやすりで荒らします。
プラバン貼り付け
プラスチック板を張り付ける部分に両面テープを設置し、
透明でかなり見辛いですが…プラスチック板を貼り付けます。
この時、菱目打ちで開けた穴にプラスチック板が被らないように注意します。
接着
まずはカードケース上部の小さいパーツに接着剤を塗布し、
張り合わせたあと、クリップで固定しておきます。
背面パーツ(大)にも接着剤を塗布し、
張り合わせ
最後のパーツにも塗布、
貼り付けで完了です。
張り合わせた後はクリップで固定し、乾くのを待ちます。
乾いたらクリップを外して次の工程に進みます。
縫製
糸で縫い始める前に、針の通しを良くするために、丸ギリで穴を広げておきます。
あまり広げ過ぎると見た目が悪くなるので注意が必要です。
手縫いで仕上げますが、使用する糸はビニモMBT#1の108番です。
ビニモMBTは使い勝手がめちゃくちゃいいです。
カードケースの下部から縫い始めます。
縫い方は平縫い。
縫い終わりはボンドを糸の根本に塗り込み、
切断。
釣り糸用のラインカッターで焼き止めします。
ライターでも大丈夫です。
コバ磨き
先に処理した内側のコバ以外の外周部分のコバを磨いていきます。
カンナで整える
切り出した革を張り合わせただけなので表面は凸凹で見た目もあまりよくありません。
写真奥に見える黒豆カンナで削り、
CMCを塗布してウッドスリッカーで擦ります。
ちょっと奇麗になりました。
ヘリ落とし
ここで一旦、
表面外周と
裏面外周のヘリを落としていきます。
やすりがけ(#240)
ヘリ落としが終わったら、
#240の紙やすりで磨き、
CMC塗布後、布で磨きます。
さっきよりもちょっと奇麗になりました。
やすりがけ(#400)
次は#400の紙やすりで磨き、
CMC塗布後、布で磨きます。
かなり奇麗になりました。
普段はここから2~3回、#400の紙やすりで磨き→CMC塗布して磨くを繰り返します。
「タンニン鞣しのヌメ革」はコバ処理がしやすくてお勧めなので一度使ってみてください!
ハトメリングの取り付け
ハトメリングの取り付け方は下記記事にも詳しく書いてあるのでご参照ください。
表から金具を挿入し、
裏からリング状の金具をあてて
ハトメ打ちで固定します。
かなりできてきました。
ストラップの作製
ここからはストラップの作製を簡単にまとめていきます。
普段はストラップカッターを使って切り出しておりますが、今回は革包丁で裁断していきます。
切り出し
直線に1mの長さになるように1㎝幅で切り出します。
今回は2㎝幅の帯を二つに分けていきます。
革包丁は刃先が広い為、扱いに慣れれば定規を使用しなくても直線に裁断することができます。
幅1㎝、全長1mの帯ができました。
ヘリ落とし
肌に触れるトコ面側はヘリが当たるとちくちくするため、ヘリ落としで両サイドのヘリを落としておきます。
ナスカン取り付け
作製した帯の両端を写真のようにナスカンに通し、折り込みます。
織り込んだ帯の両端の中心辺りに
丸ギリを使って目印の穴を空けます。
穴を中心として、#8のハトメ抜きを使用し、
3ヵ所に穴を空けます。
空けた穴に両面カシメを取り付けたら完成です。
完成
ナスカンとハトメリングのかみ合わせも今回使用した金具であればご覧いただいた通りです。
使用するナスカンとハトメリングの組み合わせによってはかみ合わせがうまくいかない場合がありますのでご注意ください!
まとめ
今回ケースの新作開発ということで型紙の作製からご紹介してみました。
ひとつでも自分が得意な作品があれば、少しアレンジするだけでかなり印象の違うオリジナルの作品を作ることもできると思います。
市販されている型紙を自分好みに作り替える参考にしていただけたら嬉しいです。
このような内容に需要があるのかどうかわからないのですが…ご要望があれば別の作品もご紹介していけたらと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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