革の中で最も使用頻度の高いのが牛革です。
牛の皮は毛が前面に均一に生え汗腺も少ないためキメが細かく、丈夫でコシがあり、カバン、靴、衣料品など、最も身近に使われています。
今回は牛革の流通・分類・革の部位についてまとめました。
分類・革の部位のカテゴリーではそれぞれのおすすめ用途もまとめております。
是非ご覧ください!
流通
革製品でよく使われている牛革ですが、多くは食肉加工の過程で生まれる副産物です。
牛肉の消費量は世界的にも多く、2018年の世界の牛肉生産量は7127万トン。
このことから牛革の供給は安定していると言われています。
特に米国は牛肉生産量が2020年世界1位で1236万トン(参照Food and Agriculture Organization)。
日本では原皮の大半がアメリカから輸入されています。
コロナの影響
しかし2022年2月現在、日本においてはコロナによる影響からか牛革の原皮の輸入量が減っており、タンナー様での革の生産量が抑制されているようです。
私がお世話になっている山陽の本ヌメ革(キャメル)も3月まで入荷がないとのこと・・・

分類

月齢、性別、または出産の有無などで細かく分類されているのが特徴。
一般的に牛革と言えば成牛(ステア)の革のことで、年齢が低くなるにつれ中牛(キップ)・孔牛(カーフ)となっていきます。
分類は5種
原皮は8~15ポンド(4~7キロ)程度で、9.5ポンドをライト・カーフ、9.5~15ポンドをヘビー・カーフと分けて呼ぶこともある。
薄くてきめ細かい銀面が特徴で牛革の中で最高級とされる素材。
鞄、手袋、帽子といった高級装身具に使用されることが多い。
カーフよりやや決めは粗いが、その分、分厚く強度がある。
まだ成牛ではない為、傷も少なく銀面が美しい。
カーフに次いで高級な牛革で、日本人に特に人気がある。
鞄、手袋、帽子といった高級装身具に使用されることが多い。
生後3~6か月以内に去勢された牡牛。
面積も大きく、厚みが均一な為、最も流通されている牛革。
肉としての品質アップのため去勢をしているので気性が穏やかで、成育中の他の牛との喧嘩が少なく傷も少なめ。
カバンや靴、財布、ベルト、ウェアなどに使用される。
一般的には出産経験のある牝牛革。
厳密には出産経験ありのメス牛をカウ、未出産牛をカルビンという。
ステアよりも柔らかく薄手で、ステア同様、判も大きいため流通量は多い。
ベリー部分は出産経験の際に伸縮をしているため、キメがやや粗め。
面積が広く取れるため、ジャケット、コートや大きめのバッグ類に適している。
非常に大型で大きな面積が取れる。
繊維組織が荒く、厚手で硬い。
オスの成牛のため気性が荒く他の牛との喧嘩が多いのでキズも比較的多く見られる。
用途:厚みと硬さが特徴であることから、靴の底革や業務用のベルトなどへ使用される。
革の部位

牛革は背中の皮は伸びにくく、おなかはたるみやすい、といったように部位によって伸縮性や硬さ、厚みなどの性質が全く異なります。
製品のどこにどの部位を使うと良いのか、部位の特徴を交えてまとめていきます。
部位の特徴・お勧め用途
背中からお尻の部分。
繊維の密度、厚みがあり伸びにくく、耐久性が高い。
革質も良く、広い面積を取るのに向いている。
バッグ、ベルトや靴の底材に適している。私は手帳カバーなどの表革に使用しています。
肩の部分。
激しい動きに対応している部位のため、柔軟性があり革厚は薄い。
比較的しわや傷が多いが耐久性は高い。
ショルダー~ベンズにかけてカバンのベルトに使用することが多い。
首の部分。
革厚は全体で最も厚いが耐久性は低い。
私はコインケースなどの小物を作るときに利用することが多いです。
厚みは購入する際にベタ漉きをすることで均一な厚さに仕上げをしてもらっています。
おなかの部分。
伸縮が激しい部位のため柔軟性があり、伸びやすい。
耐久性は低い。
一番扱いづらい部分の革ですが面積も大きい…。
私は財布やシステム手帳、名刺入れの裏張りに使用することが多いです。
まとめ
一重に牛革と言っても上述したように分類・部位によって適した使い方が異なってくるため、入手した革の特性を見極めるのは大変かもしれません。
しかも、なめした後の仕上げ方法による特性やタンナー毎に革の仕上がり具合が違う…など私もこれまで革の扱い方にとても苦労しました。
少しでも多くの方にしっくりくる革に巡りあって頂けるよう、今後もいろいろな情報を発信していけたらと思います。
参考文献
レザーソムリエ資格試験公式テキスト 日本革類卸売事業協同組合
レザークラフトの便利帳 誠文堂新光社
手縫いで作る革のカバン NHK出版
LS&D 株式会社ワールドフォトプレス 1224号
独立行政法人農畜産業振興機構 主要畜産国の需給
グローバルノート 牛肉の生産量
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