現代において鞣しは「植物タンニンなめし」、「クロムなめし」、「コンビネーションなめし」の3種類が主流となっています。
それぞれの鞣しの特徴について見ていきます。
植物タンニンなめし
植物由来の「タンニン」を用いた鞣し手法です。
その歴史は古く、紀元前600年頃の地中海沿岸で使用されていたことがわかっています。
タンニンとは?
タンニンとは植物の種子に多く含まれる渋み成分で、ポリフェノール化合物の一つです。
鞣しに使用されるタンニンはミモザ、ケブラチョ、チェスナッツなどの樹木から抽出されます。
タンニンはたんぱく質への結合能がおおきく、たんぱく質を凝固・固定する能力が強いことが特徴です。
植物タンニン鞣しの特徴
厚くて摩耗に強い革を製造することができます。
しかし製造には数か月を要することもあり、非常に手間と時間がかかる方法です。
手間がかかる分、経年変化(エイジング)も楽しめることから、革好きにはたまらない革となります。
植物タンニン革~メリット・デメリット~
植物タンニン革のメリット・デメリットを簡単にまとめました。
作るのに時間がかかるうえ、2022年2月11日現在、感染症流行の影響で原皮の輸入が滞り、タンナーさんでの生産がストップしているものもあるみたいです…
植物タンニン革オンリーで製作している身には非常につらい時期です…
早く落ち着いてほしいですね。
適している製品
鞄 財布 名刺入れ ベルト etc…
クロムなめし
クロムなめしとは、「塩基性クロム塩溶液」を用いた鞣し方法です。
その歴史は浅く、1884年に実用化された比較的新しい技術です。
塩基性硫酸クロム塩を使って皮の内部のコラーゲン繊維の間に橋をかけ、空間を保つことで生体時に近い状態を保持することができます。
- ある種のクロム化合物が鞣皮性を有することをドイツのKnapp氏が発見
- 1884年アメリカのAugustus Schultz氏が重クロム酸塩と塩酸で処理する二浴法によるクロム鞣しを実用化
- 1893年MartinDennis氏があらかじめ還元して調整した塩基性クロム塩溶液を使用する一浴法なめし技術を開発
- 1960年代塩基性クロム塩を粉末としてなめし剤メーカーが供給するようになる。
クロム革~メリット・デメリット~
上記のようにクロム革にはメリットが多かったです。
しかし経年変化のような革独特の個性を持った植物タンニン革が好きな人にとっては少し物足りないのかもしれません。
ですが…やはりクロム革すごいですよね。
適している製品
鞄 財布 名刺入靴 鞄 衣料品 家具 etc.
コンビネーションなめし
2種またはそれ以上の鞣し剤の使用による鞣しのこと。
例えば…クロムなめし後にタンニンなどで再鞣しをする、等の方法です。
各加工の欠点を補い、単独のなめし剤では得られない様々な特性を付与させることができる、ハイブリットな鞣し加工です。
多様な新しい触感や性状を求める市場の要求に対応するため、この種の鞣し処方の重要性が増しています。
植物タンニン革とクロム革の特性比較
タンニン革とクロム革の特徴を表でまとめてみました。
植物タンニン革 | クロム革 | |
歴史 | 古い | 浅い |
鞣し剤 | タンニン剤 | クロム鞣剤 |
色 | ベージュ | 青 |
伸び・弾力性 | 小さい | 大きい |
物理強度 | 弱い | 強い |
吸水性 | 強い | 弱い |
耐熱性 | 一般的に低い | 高い |
耐光性 | 弱い | 強い |
柔軟性 | 堅い | 柔らかい |
金属 | 反応する | 無反応 |
カビ | 生えやすい | 生え難い |
時間 | 数日~数週間 | 数日 |
価格 | 一般的に高い | 一般的に安い |
こう見るとクロム革の実用度はかなり高いです。
一般的に使用される革にクロム革が多く使われている理由も納得です。
まとめ
今回は3種類の鞣し方法についてまとめてみました。
単純な特徴のメリットだけを見るとクロム革の汎用性の高さがすごいですね…
しかし、先にも書きましたが革本来の良さ(エイジングや重厚感等)を実感できるのが植物タンニン鞣し革なのかな…と個人的には思っています。
今後も私はタンニン鞣し一筋で頑張ります!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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